俺から逃げられると思うなよ
「蓮? ……穂村?」



繁華街から少し歩いたところで名前を呼ばれる。

ラーメン屋の前で立ち止まった神崎くん。

私たちの名前を呼んだのは、間違いなく涼の声。



「なにしてんだよ」



ラーメン屋から出てくる涼。

その顔は普段と同じ表情で。

私たちを不思議そうに見つめている。


なにしてんだよ、って……。

私がなにしてんだよ、って言いたいよ。



「あんったねぇ! 晩ご飯はオムライスって言ったじゃん!」

「……は?」



神崎くんと涼の声が揃う。



「オムライスだって言ってるのに、なんでラーメン屋から出てくるのよ!」



神崎くんの背中の上で、“ラーメン”や“オムライス”を繰り返し叫ぶ私。

うるさい、と、涼の表情が言っているけど、そんなことかまっていられるか。


オムライス、みんなで食べようと思っていたのに。

久しぶりに4人集まったから、一緒に食べたかったのに。

なんで、ひとりでラーメン食べちゃうのかな。

寂しいじゃん!


私は、さっきまで怖い思いをしていたことも忘れて、涼に文句を言う。
< 105 / 276 >

この作品をシェア

pagetop