俺から逃げられると思うなよ
「茜。……俺のことは?」



神崎くんまで聞いてくる。



「大切、だよ?」



私が答えると、満足した表情の神崎くん。

そして再び騒ぎ始める千秋くん。



「好きより、大切のほうが僕も良かったーっ」

「好きか嫌いかで聞いたのは、千秋くんじゃん」

「もーっ」



そんな私たちを見て、大笑いする涼。


みんな暑さで頭がおかしくなったのか。


涼の笑い声が頭に響く。

そのくらいうるさい。

千秋くんの騒ぎ声にも、神崎くんのきれいな微笑みにも、頭がくらくらしてくる。


早く、教室戻ろう。

暑さなのか、うるさいのか、頭が痛い。


お弁当箱を片付けて立ち上がろうとした瞬間。


頭の中が、ぐらんと回る。

視界もぐるりと1回転して立ち上がることも、バランスを保つことも出来ない。

中途半端に立ち上がった私は、そのまま倒れこむ。


誰かが支えてくれたような気もするけれど、目を開けることも出来ず。



私はそのまま、意識を手放した。
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