俺から逃げられると思うなよ
「穂村 茜、です」

「そう。茜だって」



神崎くん。

わざわざ伝えなくても、ヤンキーくんにちゃんと聞こえているから。



「穂村? ああ。転校生か」

「そうです。3日前に転校してきました」



なんで、ヤンキーくんに自己紹介しているんだろ。



「茜、だよ」



神崎くんはそろそろ黙っていて欲しい。

私の名前を呼んでくれることは嬉しいけど。

ヤンキーくんに睨まれるから、黙っていて。



「で。蓮はなんで、こんな女の手、握ってんだよ」



私も聞きたい。

なんで、神崎くんは私の腕を掴んだままなのか。

いいかげん、離して欲しい。



「一緒に帰るから」

「はあ!?」



大声上げるのも、やめて欲しい。

耳が痛くなる。



「だから“茜”、だって」



神崎くんも、ヤンキーくんを怒らせないで欲しい。

睨まれるのは私なんだから。
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