俺から逃げられると思うなよ
神崎くんが用紙を受け取って戻ってくると、ため息をついた。



「ど、どうしたの?」



横でため息をつかれたら、思わず聞いてしまうじゃないか。


私にテスト用紙を渡してきた神崎くん。

見ていいよ、ってことなのかな?


私はそっと、折りたたまれたテスト用紙を見る。



「77点……」



思わず、声に出してしまう。


クラスメイトの会話からして、今までこのクラスのトップは神崎くんの点数だと思っていた。

だけど、私が予想した点数より低かった。


神崎くんに、そっと用紙を返す。


教室を見渡せば、クラスメイトがテスト用紙の見せ合いをしていた。

涼は、用紙を枕にして寝ていたけれど。

赤点は免れたのかな?


ちらちらと、クラスメイトの視線も感じる。

何か言いたげなのは伝わるよ。

嫌と言うほど伝わりますよ。



「茜」

「ん?」

「勉強教えて」



神崎くんの言葉に教室がしん、とする。


えーと。

これは、どういう空気なんでしょうか。
< 121 / 276 >

この作品をシェア

pagetop