俺から逃げられると思うなよ
分からないけど、神崎くんの目は真剣だったので。



「私に出来ることなら……」



と、頷いた瞬間。



「穂村さん! 俺のも見て!」

「私にも勉強教えて!」

「てか、何点だったの!?」



クラスメイトが私を取り囲む。

こんなことは人生で初めてだったので、どうしていいのか分からなくなる。


戸惑う私と、私にすがるクラスメイトたち。



「このままじゃ、夏休み補習だから! 頼みます!」



男の子が私に手を合わせる。

それを真似するように、みんなが手を合わせた。


神崎くん助けて。


と、クラスメイトの隙間から神崎くんを見ると、神崎くんまで手を合わせていた。

神崎くんは補習ないから手を合わせなくても……。


私は苦笑いをしながら、



「分かった……」



と、答えていた。

その言葉に顔を輝かせたクラスメイト。

嬉しそうに私に話しかけてくれる。



「穂村さん、ありがとーっ!」

「助かる!」



私に笑顔を向けてくれるクラスメイト。

今まで、この教室で関わってきたのは神崎くんと涼だけだったから、なんだか新鮮。


私なんかが、こんなクラスメイトに囲まれていいものなのか、と思うけど。


今は純粋に嬉しい。
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