俺から逃げられると思うなよ
教室についた瞬間、疲れがどっと出る。

寝不足な上に、朝の重たい空気が私を疲れさせた。


いや。

涼と朝ご飯作っているときまでは良かったんだけどね……。

この疲れは、全部千秋くんのせいだ。

千秋くんが誤解されるようなことを言うから。

朝ご飯を食べているときから、涼と神崎くんと話していない。

千秋くんはうるさいほど私に話しかけてきたけど。

それも、状況を悪化させるだけだった。


何度目かのため息をついていると。



「穂村さん」



名前を呼ばれる。

顔を上げると、クラスメイトの男子が机の目の前に立っていた。

あ、テスト赤点の男子だ。


覚え方がひどい、と我ながら思うけど、名前と顔が一致していないんだから仕方がない。



「……寝不足?」

「えー、少しだけ?」



気遣ってくれるような聞き方に、私は少しだけ元気を取り戻す。

こうやってクラスメイトが気遣ってくれるのは嬉しい。
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