俺から逃げられると思うなよ
「あ、そうだ」



私は鞄から茶封筒を取り出す。

赤点男子くんに、テスト対策冊子を渡そう。


だけど。

名前が分からないや。

いまさら名前を聞くのは失礼じゃないか、と思いつつ、名前を聞かないと始まらないので、遠慮がちだけど聞くことにした。



「名前、聞いてもいいですか?」



目の前の赤点男子くんは笑いながら、



「佐藤だよ。佐藤 祐介」

「佐藤くん!」



私は思わず赤点男子くん……、佐藤くんの名前を繰り返した。



「昨日、ルーズリーフにメッセージ書いてくれたの、佐藤くんだよね!?」




私は、佐藤くんが間違えたところを書き出してくれたルーズリーフを取り出す。



「このメッセージ、すごく嬉しくて! ありがとう!」


佐藤くんは照れたように頭を掻いている。



「こちらこそ、ありがとう」



こんな爽やか系男子くんが赤点を取るなんて不思議で仕方がない。


そんなことより。



「テスト対策、作ったの! 貰ってくれるかな?」



茶封筒から、佐藤くんの分の冊子を取り出す。

手渡すと、目を丸くして驚いた様子の佐藤くん。
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