俺から逃げられると思うなよ
「涼、この浮き輪は?」

「サイズ、小さくね?」

「そっか」



私が手に取った浮き輪はピンク色でドーナツがデザインされていた。

かわいいと思ったんだけどなぁ。



「浮き輪って何個買うの?」



私が質問すると、涼は『お前、バカ?』みたいな視線を投げてくる。



「4人で行くんだから、4つだろ」



いやいや。

涼の言葉に私が『バカなの?』と視線を投げたいよ。



「4つも買う予算ないからね?」

「は?」



予算的に2つか3つしか買えないよ、と涼に伝えると、心底驚いた顔をしてくる。



「みんなで泳げないじゃねぇか」

「交代で使えばいいじゃん」

「はぁ」



涼がため息をつく。

そんなため息をつかれても、予算は予算なんだからどうしようもない。


だけど、涼はみんなで泳ぎたかったんだね。

そう思ってくれるってことだけで私は嬉しかった。
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