俺から逃げられると思うなよ
「涼、」

「あんたねぇっ!」



神崎くんが言いかけた言葉をさえぎる。

握られていた腕も振り払って。

ヤンキーくんに詰め寄る。



「言っていいことと、悪いことがあるって知らないの!?」

「は?」

「なんで俺が怒られているのか分からない、って顔。やめないさいよ!」



私の怒りの声が校門前で響き渡る。

すれ違う生徒はびっくりしたように私たちを見るけど、今は無視。



「その言葉が人を傷つけるの! そんなことも分からないの!?」



ヤンキーくんは一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに不機嫌顔に戻って。



「お前、ウザイ」

「ウザイ? 私あなたに何かしましたか!? 気に障ることがあるなら、はっきり言いなさいよ!」

「……もういい」



私から顔を背け、校門の向こう側へ歩いてくヤンキーくんに腹が立って仕方がない。

背中を向け歩いていくヤンキーくんを追いかけ、ブレザーを掴む。



「なんだよ」

「逃げるのやめてよ」

「逃げてねぇし」
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