俺から逃げられると思うなよ
「自己紹介していなかったよね!」



美少女は私の前に立つ。

そして満面の笑みで名前を教えてくれる。



「朝比奈 沙耶です!隣町にある西高の2年生だよ」

「はあ、どうも」



朝比奈 沙耶か。

やっぱり同じ2年生……。

うっすら名前を聞いたことあるような気がする。



「あなたは?」



朝比奈 沙耶は、私のことを知っているのか分からないけれど、満面の笑みで聞いてくる。


答えたくない。

西高の生徒に、名前なんて名乗りたくない、と思っていると。



「聞かれてんぞ」



涼が私の頭を叩いてくる。


空気読んでよ!

と、思うけれど、この空気は確実に自己紹介をする空気だ。


心の中の大きなため息と緊張を隠しながら、私は自己紹介をする。



「穂村 茜、です。東高、2年」



緊張と恐怖で手汗がすごい。

顔が引きつっているのも分かる。
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