俺から逃げられると思うなよ
試着室から飛び出した私に向けられていたのは、携帯。

驚いた瞬間、カメラのシャッター音が鳴った。


今。

朝比奈さんが携帯で私の水着姿を撮ったよね?



「ちょっと、消してよ!」



私が朝比奈さんの腕を掴むと、朝比奈さんはにやりと笑った。



「痛いっ、やめてっ」



大きな声を出す朝比奈さん。

そんな大きな声を出すほど、強く握っていないんだけど。


それより、写真を消して欲しくて。

私が頼んでいると。



「なにしてんだ」



後ろから、聞こえる低い声。



「涼くんっ」



朝比奈さんは思い切り私の腕を振り払って、私の横を通り過ぎる。

振り向けば、涼に抱きついている朝比奈さんがいた。
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