俺から逃げられると思うなよ
「惚れてないから」



千秋くんに言葉を返すと、頬を膨らまして拗ねる千秋くん。

かわいさは変わらないね。



「お前、なんでパーカー着てんだよ」



触れて欲しくなかったところを、涼が触れてくる。

私は平常心を装って答える。



「焼けたくないし?」



半分本当だけど、半分は水着姿を見て欲しくないから。


何度目か分からないけど、言いたい。


この水着は恥ずかしい。



「そんなこと言ってたら、泳げないじゃねぇか」



まあ、そうなんですけどね。

海に入るときはさすがにパーカーを脱ぐけれど。



「早く海に入ろうよーっ」



千秋くんの言葉に肩がはねる。



「入る」



神崎くんは浮き輪をひとつ持って、海に入る気満々だ。

続けて涼も浮き輪を持つ。



「あーっ! 僕の浮き輪、取らないでよぉ!」

「お前のじゃねぇだろ」

「茜ちゃんと一緒に使いたかったのに!」



浮き輪ひとつで騒いでいる彼らが微笑ましい。
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