俺から逃げられると思うなよ
「わっ!?」



予期せぬ出来事に私は驚きを隠せない。

ひっくり返る!? と、思ったけど、浮いたままの浮き輪。


そして私の腕に触れる冷たい手。



「茜」

「か、神崎くん!?」



振り返れば、神崎くんが私の浮き輪に体重を預けていた。

神崎くんは私の手を握る。

突然の行動に私は戸惑うばかりだ。



「ど、どうしたの?」

「……水着、似合ってる」



神崎くんの視線と甘い言葉にくらっとする。


似合っているって……。

私の欲しかった言葉だ。



「でも、さっき……」



パーカーだって押し付けてきたし、『危険』とか言われたし。

私が反論すると、神崎くんは握っていない、もう片方の手で私の頭を撫でた。



「茜、かわいいから。ほかの男に食べられちゃいそうで危ない」



甘く囁かれる。

ドキッと心臓が飛び跳ねた。


神崎くんの不意打ちのほうが危ないよ……。
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