俺から逃げられると思うなよ
「た、食べられないよ……」



神崎くんから顔を背けるけど、戻される。

私の頭に触れていた手が、頬に触れたので思わずびくっとしてしまう。


少し濡れた冷たい手。

ドキドキが止まらなくなる。



「なんで?」



なんで、って言われても……。


スタイルだっていいわけでもないし、かわいいわけでもない。

良くて普通だし。



「ひ、貧相だからっ……」



神崎くんがすっと目を細める。



「涼に言われたこと気にしてるの?」



その声は甘いけど、少し拗ねたようだった。



「気にしている、というより、そう思うから」

「茜はかわいいよ」



神崎くんの甘すぎる言葉に、私はどうしていいのか分からなくなる。



「千秋にも、涼にも、取られたくない」

「えっ?」



なにを? と、聞く前に神崎くんが口を開く。



「茜は俺のものがいい」

「っ、」



その目はしっかりと私の目をとらえていて。

目をそらすことが出来なかった。
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