俺から逃げられると思うなよ
神崎くんの言葉は、まるで、私のことを“好き”って言っているみたいで。


勘違いしちゃうよ。


冷静になろうとすればするほど、頭がぐるぐるする。

何か言わなくちゃ。

そう思うのに、言葉が出てこない。



「茜」



神崎くんに名前を呼ばれる。

海の上でぷかぷかと浮いている私たち。

まるで2人だけの世界に入ったみたいだ。


私は息をのんで、神崎くんの言葉の続きを待つ。



「好きだよ」

「えっ……」



勘違いしちゃう、と思ったばかりなのに。

『好き』と言われたら、もっと勘違いしちゃうよ。


だけど、神崎くんのことだから、それは“友達”として“好き”ってことなのかもしれない。

私が恋愛対象になるわけないよね。


そう思うと納得する。

神崎くんは天然だから。

ちょっとおバカなところもあるから、と、自分に言い聞かせる。
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