俺から逃げられると思うなよ
「茜、かわいい」



必死に言い聞かせているのに、そんなこと言われたら余計分からなくなっちゃうよ。



「キスしたくなる」

「っ!?」



ぼんっ、と顔が熱くなる。



「……キス、してもいい?」



神崎くんの顔が少し近くなる。



「だめだめっ……」



海の中で足をばたばたさせる。

手は神崎くんに握られたまま、離すことが出来なくて。

無駄な抵抗をする。


今まで見たことのない、神崎くんの言動にドキドキが加速する。

自分も神崎くんの言動についても分からなくなっていると。



「茜ちゃんっ」



千秋くんの声がしたと思ったら、後ろからぎゅっと抱きつかれる。

再びバランスを崩しそうになる私。

ひっくり返るかと思った。

神崎くんも、千秋くんの突然の登場に驚いたのか私から手を離す。
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