俺から逃げられると思うなよ
「千秋くん……?」

「キスしちゃだめっ」



今の話、聞かれてた!?



「キ、キスしないよっ……」

「なんで?」



神崎くんが聞いてくるけど、キスはしないよ!

付き合っているわけでもないし。

好きとかよく分からないし。



「じゃあ、僕とはっ!?」

「しません」



千秋くんの言葉で、なぜか冷静になった私。

彼らは、私をからかっているだけかもしれない。


特に千秋くん。

最近、千秋くんはなにかと私に絡んでくるけれど、それもからかわれているのかもしれない。

嫌じゃないから、拒まない自分もいるけど。


でも!

キスは付き合ってからするものでしょ?

軽々しくキスできるような女と見られたら困る。

ファ、ファーストキスだってまだなのに……。


そんなことより。

海の真ん中。

この男2人に囲まれていたら危険だと察知した私は、浮き輪に体重を預けながら、岸辺に泳いでいく。



「茜ちゃん!?」

「お腹空いたから、海の家に行ってくるっ」



ぷかん、と浮き輪も使わず、海の上に浮いている彼らは運動神経がいいんだろう。

そんな彼らを放っておいて、私は海の家へ向かった。
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