俺から逃げられると思うなよ
涼に握っていた手を引っ張られ、後ろへバランスを崩す。

気がつけば、涼に後ろから抱きしめられているような体勢になった。



「りょ、涼!?」



抱きしめつつ、私の頭を撫でる涼。

涼を連れ戻したときとは違う意味で、またドキドキしてしまう。



「さっき。助けてくれてありがとな」



耳元で囁かれる涼の言葉に、私は頷くことしか出来なかった。



ふと、朝比奈さんの言葉を思い出す。

『体だけの関係』『しつこく誘われた』

あれだけ女嫌いをしている涼が、そんなことをするのだろうか。
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