俺から逃げられると思うなよ
思わず顔を上げる。

私の頭に手を乗せたままのヤンキーくん。


今。



「私のこと、名前で呼んだ!? 呼んだよね!?」

「名前じゃないっ! 名字だ、バカっ!」



なぜか顔を真っ赤にして、私の頭から手を離すヤンキーくん。


名前だろうが名字だろうが、それはどうでもいいんだけど。

さっきから、“ちんちくりん”とか“こいつ”としか言われていなかったから嬉しくなった。


私も、名前を呼び返そうとして、ふと思った。



「ごめん。私、あんたの名前、知らないや」

「はっ?」



なぜか機嫌が悪くなるヤンキーくん。

さっきまで、ちょっと笑顔だったのに!



「だって、自己紹介されてないし」



私、悪くないよね!?

自己紹介しなかったのはヤンキーくんだし!



「涼。……翠川 涼」



翠川 涼……。

うん、覚えた。



「翠川くん! 改めて、よろしく!」

「……涼、でいい」



顔を赤くしたまま、そっぽをむくヤンキーくん。


え、なにそれ。

かわいい。


キャラに合ってないけど、かわいく思えた。
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