俺から逃げられると思うなよ
「一緒にいるだけで、安心する存在って大事だよね」



独り言のように話し続ける私。



「私にとって涼は“大切”だから、隣にいるだけで、なんだか安心するんだよね」



ふふっ、と思わず笑顔がこぼれる。

恥ずかしいことを言っているな、って自分で思う。

だけど、いつの間にか、私にとって涼は“大切な存在”になっていたんだと思うと心が温かくなる。



「……俺が、俺じゃなかったら?」

「ん?」

「例えば、俺がとんでもねぇブサイクだったら……。それでも、お前は今、俺の隣にいるか?」

「当たり前じゃん」



私は一瞬の迷いもなく答えた。



「見た目とか関係ないよ。大切なのはさ、自分を大切にすること、でしょ?」



どんなに荒れていたときがあっても。

どんなに苦しいときがあっても。

どんなに迷うときがあっても。

自分で自分を傷つけたら、それは1番悲しいこと。


今の涼は、『女が嫌い』って言っているけど、それも自分を守るために大切なことだと思う。

自分の体も心も守るために、涼にとっては必要な言葉なんだよ。


私は涼と目を合わせる。
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