俺から逃げられると思うなよ
「涼は涼だから。だから、私は涼の隣にいるんだよ」



私は隣にいる。

そう伝わって欲しい。



「もう、ひとりで抱え込まないで。自分を傷つけたりしないでね」

「……ああ。分かった」



涼の表情が和らいだのが分かる。

伝えたいことが伝わったんだと、感じる。



「そろそろ帰ろうか。2人、心配しているかも」



ベンチから立ち上がる私。

帰ろうと足を踏み出すけど、涼は座ったままだった。

座ったまま動こうとしない涼。

不思議に思って、涼の顔を覗き込む。



「涼、どうした……わっ!?」



どうしたの、と言いかけたところで、涼に腕を引っ張られる。

バランスを崩して涼に体重を預けている私。


もしかして、抱きしめられている……!?



「りょ、涼!?」



急な出来事に心臓の音がうるさくなる。

涼の腕が、私を抱きしめる力が強くなる。

体格の良い涼の体にすっぽり埋もれる私。

離れようとしてもびくともしない。
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