俺から逃げられると思うなよ
「女は嫌いだけど」



涼の言葉が耳にかかる。



「穂村は別だ」



ドキッと心臓が跳ねる。

何も言えない私を抱きしめ続ける涼。



「……穂村。朝比奈に、何もされなかったか?」



涼の口から、朝比奈さんの名前が出たので、びくっと肩が跳ねる。

朝比奈さんには、水着の写真を撮られたけど……。

そんなことは言えない。



「だ、大丈夫だよ?」

「さっき、あいつに思い切り睨まれていただろ?」

「まあ……」



涼と朝比奈さんの間に入ったとき、朝比奈さんに睨まれたけど。



「あいつのことだから、なにするか分かんねぇ」



体がこわばる。


そうだ。

朝比奈さんは西高の生徒だ。

私の転校前の学校の生徒……。


水着の写真だって、なにに使われるか分からない。

なにをされるか分からない。


これから何が起こるかを想像しただけで体が震え始める。

そんな私の体を強く抱きしめてくれる涼。


それでも、震えは加速していくばかりだ。
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