俺から逃げられると思うなよ
「穂村」



涼が名前を呼んでくれるけど反応できない。

嫌な想像ばかりが頭を占めつくす。

どうしよう。

怖い思いはしたくないよ。



「穂村」



涼が私の頬に手をかけ、うつむいていた私の顔を上げる。

視線が合う。

涼の瞳はまっすぐに私を見ていた。



「俺が、お前を守ってやる」



震える私を守るかのように、涼の腕に力が入る。



「だから安心しろ」



その言葉に、思わず涙がこぼれた。

そんな私の涙を拭ってくれる涼。

温かい涼の手。

温かい涼の優しさ。

そんな涼の温かさに、涙は止まらなかった。



「大丈夫だ」



涼の力強い言葉。

その言葉を聞いたら、本当に大丈夫な気がしてきた。


私には大切な人がいて、大切にしてもらっている。


それだけで、私は大丈夫だと思えた。
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