俺から逃げられると思うなよ
「ありがとう」



少し震えているけれど、さっきよりはマシになってきた。

震えが徐々に落ち着いてくる。



「帰れるか?」

「うん」



涼はそっと私から体を離す。

触れていた部分に、すっと空気が触れる。


それは一瞬のことで。

体の力が抜けて、しゃがみこんでしまった。

涼に抱きしめられていたから気づかなかったけど、いつの間にか足の力が抜けていたんだ。


ひとりで立つことが出来ない私は、涼に苦笑いをする。

そんな私に、涼は背中むけて目の前にしゃがみこんだ。



「乗れ」



……おんぶ、ってことだよね。


恥ずかしかったけど、涼に甘えることにした。

ぎゅっとその背中に乗り、温かさを再び感じた。
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