俺から逃げられると思うなよ
慌てて神崎くんに声をかける。



「私も出すから!」

「いらない」



私が鞄から財布を出そうとすると、その手を止められる。

そしてあっという間に会計を済ませた神崎くん。

ケーキを受け取って、店内から出ようとする神崎くんを慌てて追う。



「神崎くん、ケーキ代……」

「いらないって」



私の言葉に神崎くんは困ったように笑う。

神崎くんは頑なに、私からケーキ代を受け取らない。



「……ありがとう」

「ん」



神崎くんはようやく笑顔を見せてくれた。



「そういえば、さっきの話の続きだけど……」



話の続きって、神崎くんのお父さんに会いに行った話だよね。
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