俺から逃げられると思うなよ
私が頷いて、話を聞こうとすると。



「穂村さん? 穂村さんだぁ!」



と、後ろから女の子の声が聞こえた。

この声は、もう覚えている。



「朝比奈さん……」



振り返れば、朝比奈さんが立っていた。


最近、朝比奈さんとよく会うなぁ。

私が立ち止まると、神崎くんもつられて立ち止まる。



「誰?」



神崎くんが私に聞いてくる。

私が答える前に、朝比奈さんが神崎くんのもとへ駆け寄った。



「朝比奈 沙耶って言います! 穂村さんのお友達です!」



きらきらと目を輝かせている朝比奈さん。

神崎くんを目の前に、テンションが上がったのか。

この2人の様子からして、2人は初対面のようだ。



それにしても。

私は朝比奈さんの友達じゃないけど、とは言えなかった。
< 205 / 276 >

この作品をシェア

pagetop