俺から逃げられると思うなよ
「……ども」



神崎くんは朝比奈さんに軽く挨拶をする。

その姿さえ、かっこいいというか。


そう思ったのは朝比奈さんも同じのようで。

目をキラキラ……、ギラギラさせていた。



「あのっ! 連絡先、交換しませんか!?」



朝比奈さんの言葉に顔を引きつらせてしまう私。

2人が連絡先を交換しようと、仲良くしようと、勝手だけど……。

朝比奈さんが何かするんじゃないか、と不安になる。


ちらりと、神崎くんを横目で見ると、神崎くんは今まで見たことないくらいの無表情だった。


そのまま、一言。



「携帯持ってないんで。すみません」



それだけ言って、私の手を取る神崎くん。

朝比奈さんに背を向けて歩いていく。

私は引っ張られるように神崎くんについていった。


背中に視線が突き刺さるけど、神崎くんが朝比奈さんとの関わりを持たなくて良かった、と、ほっとしてしまう自分がいる。


でも、なんで神崎くんは携帯を持っていないと嘘をついたんだろう。


朝比奈さんの姿が見えないことを確認してから、神崎くんに聞いてみる。



「携帯もっていないって、なんで嘘ついたの?」
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