俺から逃げられると思うなよ
「だけど、条件付きでルームシェアを続けさせてもらった」

「条件?」

「俺が、高校卒業したら……。父さんの選んだ大学に行って、父さんの不動産を継ぐこと」



言葉が出なかった。

神崎くんは、ルームシェアを続けるために、親の敷いたレールを歩んでいかなきゃいけないってこと?


涼は?

千秋くんは?

それを受け入れたの?


……神崎くんは、それでいいの?



「そこまでしても、神崎くんがルームシェアを続けたい理由ってなに?」



その言葉は、風に流されたのか。

神崎くんは答えてくれなった。

ただ、表情が少し暗くなったのが分かる。
沈黙が流れる。


今は聞いてはいけない質問をしてしまったのかもしれない。

神崎くんは、私の質問に答えるてくれる様子はなかったので、口を閉じる。


言葉を交わさずに歩いていると、いつの間にか家に着いていた。

神崎くんが玄関のドアを開ける。

靴を脱いでリビングに入ると、誕生日の飾りでいっぱいだった。

テーブルにはオードブルが並んでいて、“誕生日パーティー”って感じがする。
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