俺から逃げられると思うなよ
「あっ、茜ちゃん! おかえりーっ」



千秋くんが脚立から降りて、私に飛びついてくる。



「た、ただいま……」

「……俺には?」



私に抱きついたままの千秋くんは、神崎くんをちらりと見ると。



「蓮もいたんだ? おかえり」



なんて、少し毒が混ざったような言葉。

千秋くんのこの扱いの差が激しすぎる……。



「千秋くん、離れて?」

「えーっ。蓮とデートしてきて、僕には何もないの!?」

「デートじゃないからね」



そう言って千秋くんから離れると、次は神崎くんが拗ねた顔をしている。



「……デートじゃなかったんだ」



しょんぼりしている神崎くんは、そっとテーブルにケーキを置く。

デートしているつもりは全くなかったんだけど……。

ケーキを取りに行っただけというか。

むしろおつかい、みたいな感じだった。



「た、楽しかったよ?」



精一杯のフォローをしてみる。

だけど、それも失敗だったようで。


神崎くんはパッと笑顔になってくれたけど、次は千秋くんが拗ねてしまって。

なんで、こうなるのかなぁ。

このままだと、涼の誕生日パーティーの時間がなくなってしまう。
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