俺から逃げられると思うなよ
「千秋くんも飾りつけありがとね。涼を呼びに行こう?」



千秋くんは少し機嫌が良くなったのか、涼の部屋へ向かう階段を上っていく。

私と神崎くんはクラッカーを鳴らすため、リビングで待機することにした。



「……茜」



神崎くんが小さく私の名前を呼ぶ。



「ん?」

「さっきの……。父さんの話は忘れて」



神崎くんの言葉になんて返そうか悩んでいると、階段から足音が聞こえる。

言葉を返す前に、リビングの扉が開かれる。

神崎くんはなんでもないようにクラッカーを鳴らした。

私も慌ててクラッカーを鳴らす。


……今は、涼の誕生日パーティーを楽しもう。

神崎くんの話はまた今度、ゆっくり聞きたい。



「涼っ! お誕生日おめでとうーっ!」



私たちは声を揃えて、涼の誕生日を祝う。

私と神崎くんが鳴らしたクラッカーの紙テープを被った涼は、驚いた顔をして固まっている。
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