俺から逃げられると思うなよ
「廊下側の1番後ろだよ」
私が伝えると、佐藤くんの表情が一瞬で明るくなった。



「俺、その前の席だ!」



空気がピリッとした気がする。



「穂村さん、よろしくね!」

「よ、よろしく……」



握手を求められたので、なんとなく私もその手を握ろうとすると。


パシッと、乾いた音がする。


神崎くんが佐藤くんの手を叩いたみたいで。

その行動には、佐藤くんもびっくりしている。

私もびっくりした。



「あ、悪い……」



神崎くんが佐藤くんに謝ったと思えば、そのまま教室を出て行く。

それは一瞬のことで、驚きを隠せないけど。

神崎くんが教室を出て行ってしまったことが心配だ。



「ごめんっ。トイレ!」



私は佐藤くんに謝ってから、神崎くんのあとを追う。


慌てて廊下に出たが、神崎くんの姿が見えない。


右か左か。

上か下か。


神崎くんが向かいそうなところ……。


屋上?

どこだ?


考えても思い浮かばないので、とりあえず屋上を目指す。

静かな廊下を走る私。

屋上へ続く階段を上って、ドアを開ける。
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