俺から逃げられると思うなよ
涼は、当たり前のように玄関に鍵をさす。



「あれ。開いてた」



いやいや!

玄関の鍵が開いているってどういうことよ?

鍵の閉め忘れか、不審者がいるのか、とか思わないの!?


驚く私を置いて家の中に入る涼。


ああ。

涼は、ちょっと危機感がないのかもしれない。

そして、ここは涼のお家なのね。


ひとりで納得していると。

神崎くんが私の手を引っ張りながら玄関に入る。



「ただいま」



うん。

ただいま、だよね。

家に帰ったら、ただいまって言うよね。


って、ええ!?

ここ、涼の家じゃないの!?

本当は神崎くんの家!?

でも、涼が家の鍵を持っていたよね!?


私の頭の中はぐるぐる回転。



「茜? 入るよ?」



神崎くんに言われて私も靴を脱ぐ。

そして玄関の奥へ引っ張られると。

大きなリビングが広がっている。


リビングに置かれた大きなソファ。

そのソファから、ひょっこり顔を出した男の子。
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