俺から逃げられると思うなよ
「お姉さんが、この会社で誇りを持って働いていることは見れば分かるので」



私が頭を下げると、お姉さんはフロアマップを取り出してくれた。



「お2人は社長室にいらっしゃいます」



フロアマップの部屋を指差したお姉さん。


最上階の奥にある部屋が社長室か……。

あとは、エレベーターで最上階に上がるだけか。


私はフロアマップを頭に入れ、お姉さんに頭を下げる。



「ありがとうございます」



お姉さんは何も言わなかったが、私たちはエレベーターへ向かう。


その途中で、千秋くんがこっそり話しかけてくる。



「なんでお姉さんが合コンに行くって分かったの?」

「んー。ぼーっと、涼のことを眺めていたから?」

「はっ!?」



涼が驚いた声を上げる。



「お姉さんは涼を見て女の顔をしていたから、男絡みで何かあるのかなと思ったら、合コンしか思い浮かばなかった」



エレベーターの扉が開く。

少し千秋くんは膨れっ面だ。

せっかく社長室まで行けるというのに、なんて顔をしているんだ。
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