俺から逃げられると思うなよ
言葉が出なかった。

神崎くんが完璧でなければいけない?

涼と千秋くんは、そのための見張り役?


頭の中では話の内容を理解したつもりでも、心が追いついていかない。


だって。

そんなの、絶対おかしいじゃん。

人の人生を利用して、自由に操れると思ったら大間違いだ。



状況が読み込めてくると、怒りが湧いてくる。

ここで感情任せに怒ってはいけないのに。

大切な仲間が、今ここで傷ついているのを無視することは出来ない。



「社長は……、……していますか」



ぽつりと、言葉がこぼれる。



「聞こえないから、はっきり話しなさい」

「社長は、神崎くんのことを愛していますか」



一瞬の間があった。

だけど、すぐに答えは返ってきた。



「当たり前だろう。息子は次期後継者だ。誇りを持って愛しているよ」



歪んでいる。


そう思った。

社長の言葉を聞いて、神崎くんが傷ついたのは嫌でも分かる。

神崎くんが後継者になるから、上辺だけの愛を注いでいる。

嫌でもそう感じてしまう。


それは、愛でもなんでもない。
< 231 / 276 >

この作品をシェア

pagetop