俺から逃げられると思うなよ
「信頼だけじゃないです。あなたが、ここで働いている人たちを“優秀だ”と認めているからじゃないですか?」



信頼される社長がいて、信頼されている社員さんたちがいる。

それは、すごく素敵なことだと思った。


私の言葉は止まらない。

それを静かに聞いてくれる社長の表情は読めないけれど、聞いてくれている。

だから、思っていることを伝えたい。



「社員さん全員が、誇りを持って働いていると思います」



実際、受け付けのお姉さんがそうだった。

このオフィスビルの入り口で、来客を笑顔で迎え入れる。

その仕事にどれだけ誇りを持っているか。

大事にしているか、どれだけ誇りを持っているかなんて、少し話しただけでも伝わってくる。



「ここで働いている人たちは、尊敬している神崎社長のもとで働きたいと思って、毎日仕事をしているんじゃないですか?」

「……」



神崎社長とは初対面だけど、こうやって時間を作ってくれて、ただの高校生の話を聞いてくれる。

それだけで、神崎社長は悪い人ではないと感じる。


だから、最後に聞いて欲しい。
< 233 / 276 >

この作品をシェア

pagetop