俺から逃げられると思うなよ
その様子を見ていると、神崎くんのお父さんに名前を呼ばれた。



「穂村くん」

「え、あ! はい!」



突然名前を呼ばれたので、声がひっくり返った。

そんな私を笑う、男3人。

あれだけ啖呵をきっていたのに、今になって声がひっくり返るのは恥ずかしい。

神崎くんのお父さんも、彼らにつられて少し笑っているし。



「君には驚いたよ」



神崎くんのお父さんが軽く頭を下げる。



「頭、上げてください!」



頭を下げられることなんてしてないし!



「君の言葉は、とても心に響いた」



神崎くんのお父さんは頭を上げて、私に微笑んでくれた。

その笑顔は、神崎くんとそっくりだった。

やっぱり親子だな、と思う。



「これからも頑張るよ」



“社長”としての顔を持つ、神崎くんのお父さん。

素敵な“社長”で“お父さん”だね。

そんな社長の会社で働いている社員さんたちを少しうらやましく思った。



「私もここで働きたいと思いましたよ」

「そう言ってもらえると、ありがたい」



神崎くんのお父さんが、私の頭に手を置いてくれた。


認めてくれた……、ってことなのかな。


嬉しくなって、思わず笑顔になる。
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