俺から逃げられると思うなよ
「蓮くんっ。まずは連絡先を」



朝比奈さんの押しは止まらない。

このままだと、千秋くんと涼が持たない。

帰りたいけど、神崎くんを置いて帰るわけにもいかないし。


どうしよう。


神崎くんも、イライラしているように見える。

神崎くんに完全無視されても引き下がらない朝比奈さん。


どうしたらいいんだろう。

そう思って、頭をフル回転させていると。



「蓮く、」

「うるさい」



神崎くんの低い声が響いた。

一瞬にして静まる空間。



「えっ、」



戸惑う様子の朝比奈さん。



「あんたに名前で呼ばれたくない」



私たちも神崎くんの言葉に驚いている。

神崎くんは朝比奈さんの手を振り払い、少し遠くからその様子を見ていた私たちのもとへ近寄る。



「行こ」



神崎くんにつられて、方向転換をする私たち。


あの状態で朝比奈さんを残して大丈夫かな、と不安がよぎる。

その嫌な予感は的中して。
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