俺から逃げられると思うなよ
「どうなってんだよ……」



涼の呟きも聞こえた。

千秋くんに抱きしめてもらっているから、涼と神崎くんの様子は伺えないけれど。

涼の呟いた声は怒りまじりだった。



「千秋」



神崎くんが千秋くんを呼ぶ声が聞こえる。

千秋くんは私を抱きしめたまま、神崎くんに視線を移したことが分かる。



「なに?」



千秋くんの言葉に神崎くんは。



「茜を抱きしめていいのは俺だけ」



なんて、意味の分からないことを言っている。


神崎くんの言葉に、ざわつくギャラリー。

事態が悪化しそうな気がしますけど。


神崎くんと千秋くんが言い争いを始めた。

涼は、ギャラリーの中にいる男子生徒の胸倉をつかんで、睨みをきかせている。



「どういうことだ」



胸倉をつかまれた男子生徒は、半分青ざめた表情で携帯を涼に見せていた。



「それ……っ」



涼は携帯の画面を見たまま、固まっている。


……見られた。

水着姿は既に見られているけど。

写真として見られるのは嫌だった。


それと。


これだけ大勢の人に拡散されているのかと思ったら、震えが止まらなくなった。
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