俺から逃げられると思うなよ
「転校前は、西高の生徒だったの」



千秋くんが反応したのが分かった。

朝比奈さんと同じ学校。

そう、察したのだろう。



「……クラスメイトの中にいじめを受けていた子がいて」



その子と深いかかわりはなかったけど、いじめを無視できない自分がいて。



「いじめを止めようとしたら」



いじめのリーダー的存在に歯向かったら。



「私がいじめられた」



いじめは陰湿だった。

教科書やお弁当がゴミ箱に入っていたり。

登校したら机と椅子が消えていたり。

黒板にありもしないことを書かれていたり。


精神的なダメージは大きかった。

いじめのリーダー的存在を中心に、私をいじめていると感じていたけれど、証拠がなかった。

直接、危害を加えられることがなかったから。


担任の先生も、いじめには気づいていなかった。

……もしかしたら、気づいていたかもしれないけど。


先生もクラスメイトも、みんな知らないふり。


自分が巻き込まれたくないから。

傍観者という立場に立っていたんだろう。
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