俺から逃げられると思うなよ
「……帰っていいですか?」



てか、帰ります。

私は鞄をぎゅっと握って回れ右をする。



「おじゃましました」



背中に圧がかかっている気がする。

じーっと、見られている気がする。

振り向いちゃいけない。


私が靴を履いていると。

ぎゅっと、抱きしめられた。


えっ!?

ええ!?


何が起こったのか分からないまま、私はその場であたふたする。



「帰らないで」



耳元で聞こえたのは、神崎くんの声。

一瞬、ドキッとしてしまった。



「いや、電車の時間があるからね?」

「泊まっていけば?」



……はい!?

泊まる!?

そんな男ばかりの家に泊まるなんて無理!



「いや……。帰らなきゃ」



んー。

と、私を抱きしめたままの神崎くん。
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