俺から逃げられると思うなよ
私は“転校”という形で、学校から姿を消したから。

クラスメイトと最後まで向き合うことがなかった。


もしかしたら、もっと分かり合える人がいたのかもしれない。

いじめが広がる中でも、彼らみたいに手を差し伸べてくれる人がいたのかもしれない。



だけど。

私は、誰かを信じることもなく、ただ孤独へと自分を追いやっていった。

向き合う怖さも知っている。


だけど、彼らと会って向き合えた嬉しさも知っている。

だから、神崎くんには、お父さんと向き合って欲しい……。


そんな勝手な私の思いがあった。



「茜……」



神崎くんと私の視線がぶつかる。



「……今、この現状に戸惑っているけどね」



戸惑っているというか、恐怖でしかないけれど。

逃げたいけれど。

今すぐ、誰も私を知らないところへ行きたいけれど。



「もう……、逃げたくない」



そう、強く思えるんだ。
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