俺から逃げられると思うなよ
翌日。


いつもと違う朝。

起きれば、朝食のいい匂いがする。

今までだったら、私が朝食を作っていたのに。

実家に帰れば、お母さんが作ってくれる。

なんだか、不思議な感覚だ。



朝食を食べてから、制服に着替える。


学校に行きたくないな……。


そんな思いがよぎるが、振り払う。

重たく感じる制服に手を通して、あとは家を出るだけ。



「行ってきます」



お母さんの『いってらっしゃい』を聞く前に家を飛び出した。

包み込むような、お母さんの大好きな声を聞いてしまったら、学校に行けなくなってしまうような気がしたから。


私は重たい足を動かし、学校へ向かった。
< 266 / 276 >

この作品をシェア

pagetop