俺から逃げられると思うなよ
「なに抜け駆けしてんだよ」

「してない」



涼と神崎くんが言い合いを始める。

何が起こっているのかは分からないけれど、今までと何も変わらない光景に、胸が熱くなった。


そんな私の隣に千秋くんが座る。



「茜ちゃん」

「ん?」

「僕からも、逃げられないからね!」



隣に座る千秋くんへ視線を移そうとした瞬間。


ちゅっ。


頬に、温かいものが触れる。


今!

キスされた!?


顔を赤くし、あたふたする私。

そんな私を見て、千秋くんは不敵に笑う。



「蓮に先に言われちゃったからねーっ!」



そんな私たちを見ていたのか、神崎くんと涼が固まっている。

楽しそうに笑っているのは千秋くんだけだった。



「……千秋、てめぇ」

「涼、ヤキモチー?」

「そ、んなんじゃ、ねぇし!」

「めっちゃ噛んでるじゃん」



涼をからかう千秋くん。

千秋くんって、結構、腹黒い……?



「俺もする」



神崎くんが私の頬に手を伸ばす。
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