俺から逃げられると思うなよ
「手前から、涼、蓮、僕の部屋ね。1番奥の突き当たりの部屋が、茜ちゃんの部屋だよ」



私は1番奥の部屋の扉を開ける。

シンプルな部屋だけど、実家よりは広い部屋だ。

ベッドも用意されていて。

まるで、私を歓迎してくれているみたいな。



「気に入った?」



いつの間にか、私の後ろに立っていた千秋くん。



「うん。気に入ったよ」

「僕の部屋に入らないでねっ!?」



千秋くんは目をうるうるさせている。

そのかわいさに、胸がキュンってなる。



「入らないよ」



男の子の部屋に興味があるわけでもないし。

どんな内装なのかは気になるけれど、大体想像がつく。

ウサギでいっぱいの部屋なんだろうな、って。

それか意外に男らしい部屋だったりして。

想像すると、笑えてくる。


私は笑いをこらえるように、千秋くんにお礼を言う。



「……案内してくれて、ありがとね」



私の言葉にびっくりしたのか、千秋くんが目を丸くする。

くりくりの目が、もっと丸くなっているよ。
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