俺から逃げられると思うなよ
「千秋が辛いのが食べられねぇとか、知らなかったわ」

「べつに、食べられないわけじゃっ」



この人たちは、仲良さそうに見えて、どれだけお互いのことを知らないんだろう。

なんだか、私は悲しくなった。

本当は4人で鍋パーティーをしたかった。

千秋くんがいないのは、なんだか寂しい。


私はソファに座っていた千秋くんに近寄る。



「辛くなかったら、食べられる?」

「はっ!? ……なに。僕だけ別のもの食べろって?」



そんなことはしないよ。

千秋くんはみんなと食べられないのが、なんだかんだ寂しいんだろう。



「辛くないお鍋だったら、食べる?」

「キムチ鍋だから、無理じゃん」



まあ。

キムチ鍋には変わりないんだけど。



「ちょっと待っててね」



私は、鍋を持ちキッチンへ行く。

野菜を端に寄せてから、炊飯器の中のご飯を鍋の中に入れる。



「お前っ。なにしてんだよ!?」



涼の驚きを隠せてない声は聞こえないフリ。



その言葉に、神崎くんもキッチンへ寄ってくる。



「鍋が、鍋じゃない……」
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