俺から逃げられると思うなよ
私は、冷蔵庫からチーズを取り出した。

チーズを具材の上にのせ、再び火にかかる。


今日のお鍋のシメはリゾットにしようと思って、チーズに合いそうな具材を選んで良かった。

あとは、チーズが溶けるのを待つだけだ。

鍋のシメはないけれど、これなら千秋くんも食べられるはず。


ぐつぐつ煮えてきたから火を止め、再び、お鍋をーテーブルに運ぶ。



「千秋くんも、お鍋食べるよ」



神崎くんと涼は、不思議そうな顔をしたまま椅子に座る。

あとは、千秋くんだけなんだよね。

頑なにソファから離れない。

私の声も聞こえているんだろうけど、聞こえないフリをしている。


お鍋、冷めちゃうな。

どうしよう。


そう思って、私はテーブルとソファの間で突っ立っていると。



「……辛くない」

「キムチ鍋なのに、辛くねえ鍋もあるんだな」



振り向くと、既にお鍋を食べている神崎くんと涼。

思わず笑顔がこぼれる。



「チーズ入れたお鍋も悪くないでしょ!」



得意げに言うと。



「……チーズ」



千秋くんが呟いたのが聞こえた。
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