俺から逃げられると思うなよ
お腹がいっぱいになると、お風呂の争奪戦が始まった。



「僕が1番最初なんだからねっ!」

「いつも、俺が最初……」

「今日、風呂場洗ったのは俺だぞ!?」



……ごめん、涼。

あんた、お風呂場を洗うことが出来るんだね。

“土鍋”は知らなかったみたいだけど。


私はキッチンで、食器を洗いながら会話を聞いている。

なんだか、高校生らしい会話をしているっていうか。

私のイメージだと、ひとりひとりが一匹狼だと思っていた。


キャラがまったく違う3人。

そんな彼らが、くだらないことで言い合っている。


今までの私の生活には、まったくなかったものだ。

こうやって、くだらないことで言い合って。

笑って。

不機嫌になって。

でも、また笑い合える。

そんな存在、今まで私にはいなかったけど。

もしかしたら、今もまだいないのかもしれないけど。

この空間の中に居ることが出来て、私は嬉しいのかもしれない。
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