俺から逃げられると思うなよ
「この卵焼き、チーズは入ってんのか?」

「うん。千秋くん、好きそうだなぁ、って」



私はひとつだけ空いている椅子に目を向ける。



「千秋はどこ行ったんだ」

「もう、出ていちゃったよ……」



静かなテーブル。

私が雰囲気暗くしてどうするんだよ、と思いながらも、千秋くんのことが気になって仕方がない。


1番最初に口を開いたのは、神崎くんだった。



「千秋……。いつも裏庭にいるよ」

「え?」

「たまに見かける」



それだけ言って、神崎くんは食べ終わった食器を片付けにキッチンへ行った。


学校に裏庭なんて、あったんだ……。

じゃなくて。

裏庭に行けば千秋くんに会えるかも、ってこと?



「茜」



神崎くんに呼ばれて我に返る。



「な、なに?」

「この箱、なに?」



神崎くんが指差したのは、バンダナに包まれた4つのお弁当。
< 55 / 276 >

この作品をシェア

pagetop