俺から逃げられると思うなよ
「なあ」



家で洗濯をたたんでいると、ソファで横になっている涼に声をかけられる。



「なに?」



涼はソファから起き上がって、洗濯物をたたむ私に近寄る。



「お前さ。なんか、隠していることあるだろ」

「なにもないよ」



うん。

本当になにもないと思う。



「じゃあ」



涼の口から吐き出される言葉に、私の頭は真っ白になった。



「千秋の分の弁当って、いつもどこやってんだ?」

「っ、」



答えることが出来なかった。

だけど、私が答えないと、涼は納得いかない様子だったから。



「捨ててるよ」



なんて、嘘ついた。



「ゴミ箱にねぇぞ」



嘘ってこんなに早く、見破られるものなんですか。


私が黙っていると。



「明日から、俺も弁当いらねぇや」

「っ!?」



そう言って涼は、リビングを出て行った。


なんの感情も出てこなかった。


ただ、思い浮かんだのは。


明日から、3人分のお弁当を食べるのかな……。

って、ことだけ。
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