俺から逃げられると思うなよ
なんで。

2人はそんなに笑いながら、晩ご飯作ってくれているの?

なんで、そんなに楽しそうなの?

なんで、私を必要としてくれているの?


涙があふれる。

さっき、流しきった涙だと思ったのに。


私が泣いていると、神崎くんが私の頭をそっと撫でる。



「茜に。笑ってご飯、食べて欲しいから」



その言葉は、私の固まっていた心を溶かすのに充分だった。


笑って、ご飯を食べる……。

私、大切なこと、忘れていたんだね。



「お前っ、早く手伝えよ! ああっ! 焦げた!」



涼の声が飛んでくる。

思わず、笑みがこぼれた。
< 68 / 276 >

この作品をシェア

pagetop